法学、また、憲法重要視した施策
教育委員会の中で法学の重要性を示し、憲法含め低学年から教えるべき「いじめを道徳・生活指導だけで捉えるのではなく、刑法などの具体的な法を知り、その根底にある憲法上の『個人の尊重』『他者の自由・人権の尊重』まで理解させるべき」と一貫してまいりました。
法学・刑法・憲法教育に関する質疑
| 時期 | さとう議員の主な問題提起 | 神戸市・教育委員会の答弁・対応 | 現在までの到達点 |
| 令和元年(2019年) | いじめ行為には刑法に抵触するものがあり、弁護士による法教育を行うことが抑止力になると指摘。スクールロイヤーの活用も要望。 | 弁護士など専門職の活用について対応。学校問題を専門家に相談できる仕組みにつながった。 | 法教育・弁護士活用の必要性を市に継続して提起した出発点。 |
| 令和2年(2020年)11月議会 | 法学教育を「学校ごとの校長裁量」に任せるのではなく、どの学校に通っても同じように学べる仕組みにすべきと提起。 | その後、学校法務専門官による授業や兵庫県弁護士会による出前授業などが実施されるようになった。 | モデル・個別校中心から全校展開を目指す方向へ。 |
| 令和3~4年度 | 法学授業をいじめ防止・犯罪予防につなげるべきと継続して要求。 | 学校法務専門官による授業を令和3年度3校でモデル実施、令和4年度も3校で予定。県弁護士会による出前授業も令和3年度12校、翌年度も実施。動画配信など、学校が利用しやすい方法も検討。 | 法学授業が神戸市の教育施策として具体化。 |
| 令和5年度以降 | 「刑法を知らずに卒業する子」と「知って卒業する子」の格差をなくすべきと主張。暴行、脅迫、侮辱、事実の暴露など、学校で起こり得る行為を具体的に教える必要性を指摘。 | 教育委員会は、法や決まりの意義を理解する教育は重要と認識。弁護士会による出前授業、学校法務専門官による教材等を進めると回答。 | 「法を知る教育」の必要性について、当局も明確に認める段階へ。 |
| 令和6年(2024年)10月 | 性被害などについて、単に「やってはいけない」と教えるだけではなく、相手の人権、同意、自由を侵害することの意味を理解させることが重要と指摘。「刑法を学ぶついでに憲法の大前提を教えるべき」と提起。 | 教育委員会は、学習指導要領上、法や決まりの意義を理解することは教科横断的な教育内容として位置付けられていると説明。弁護士派遣、法務専門官による中3向け5分程度の動画を作成し、9月から各学校で活用。 | 刑法中心の「法を守る教育」から、憲法・人権を含む法教育へ広げることを要求。 |
| 令和7年(2025年)7月1日 | 教員によるわいせつ事案などを踏まえ、「基本的人権の尊重」を教員自身が理解しているのかと問題提起。法学授業を教員の意識改革にもつなげるべきと指摘。さらに小学校低学年から、年齢に応じて具体的な犯罪行為を分かりやすく教える必要性を提起。 | 教育委員会は、弁護士による出前授業、法務専門官の短編動画、いじめ未然防止学習などを継続すると回答。令和6年度には弁護士会の授業を6回実施。9年間を見通したいじめ未然防止の指導案も作成。 | 中3中心ながら、発達段階に応じた法的観点を含む指導へ拡大。 |
| 令和8年(2026年)5月18日 | 改めて、法学授業だけではなく憲法、特に「基本的人権の尊重」を明確に教えるべきと要求。「社会の問題の多くは基本的人権の尊重を教えられていないことにも原因がある」と指摘。 | 現時点で確認できる公開資料では、この質疑に対する教育委員会の具体的な答弁内容までは掲載されていない。 | 「刑法・法遵守」→「憲法・基本的人権」まで教育内容を広げることが、現在の継続課題。 |
特に重要なのは、2024~2025年の答弁
神戸市教育委員会は現在、単に「法学教育は重要です」と答えているだけではありません。
- 弁護士による出前授業
- 学校法務専門官による法的解説
- 中学3年生向けの短編動画
- いじめ未然防止学習
- 発達段階に応じた法的観点を含む指導
- 「いじめを許さない意識」
- 「思いやりの心」
- 「温かい集団づくり」
- 「規範意識の醸成」
というところまで施策化していただいています。
一方で、ここからさらに一歩踏み込んでいます。
① 刑法を知る
「これは悪ふざけではなく、場合によっては犯罪になる」
暴行、傷害、脅迫、侮辱、恐喝、窃盗、名誉・人格を傷つける行為などを、具体的に理解する。
↓
② 自分と他人の権利を知る
「自分が嫌なことをされたくないのと同じように、相手にも嫌なことを拒否する権利がある」
性被害やいじめ、SNS上の行為などを、**「相手の自由を侵害する行為」**として理解する。
↓
③ 憲法の基本原理を知る
「すべての人は個人として尊重される」
つまり、単に「法律を守りましょう」という規範教育ではなく、なぜ人を傷つけてはいけないのか、その根底にある個人の尊厳・基本的人権を理解させる教育です。
この点について、2024年の質疑では「法学、刑法を学ぶついでに憲法の大前提を教えることが非常に重要」と明確に指摘。
当局の現在の答弁を一言で評価すると
「法教育の必要性は認め、実施も進んできた。しかし、『憲法上の個人の尊重・基本的人権』を法学授業の中心的な到達目標として全児童生徒に体系的に教えるところまでは、まだ十分に踏み込めていない」
という整理が妥当だと思います。
特に、2026年5月にも「憲法についてもやっていただきたい」と改めて質問していることから、法学授業そのものは前進した一方、「刑法+憲法+個人の尊重」という本来目指していた教育にはまだ課題が残っております。
そしてこれは、以前から提起されている「いじめ」「性被害」「教員による不適切な行為」「SNS」「外国人児童生徒への差別」などを、ばらばらの問題として扱うのではなく、「他者も自分と同じく権利を持つ個人である」という共通の原理から教えるという一本の政策軸です。
さとう:熊本の震災でも、女性に対して露出を控えるようにするなど、加害者ではなく被害者に対しての注意喚起が目立った。そもそも注意されるべきは加害の方である。基本的人権の尊重から、相手の人権を尊重する教育は早急に求められると思うが。
教育委員会:おっしゃる問題意識は、「被害を防ぐために被害者の行動を制限するのではなく、加害をしない・させない側の教育を徹底する」という、人権教育の根本に関わる重要な論点だと思います。
特に災害時は、避難所という閉鎖的でストレスの高い環境になるため、平時以上に人権意識と加害防止の教育が必要です。
熊本地震から見える問題
災害時の女性への注意喚起として、
- 露出の多い服装を避ける
- 一人で行動しない
- 夜間は出歩かない
- 防犯ブザーを持つ
といった「自分の身を守る」対策が示されることがあります。
もちろん、こうした情報そのものを否定する必要はありません。
しかし、それだけでは、
「被害に遭わないために、女性が行動を変えなければならない」
という構図になってしまいます。
本来、同時に、あるいはそれ以上に伝えるべきなのは、
「災害時であっても、他人の身体・人格・尊厳を侵害してはいけない」
ということです。
つまり、「女性は気をつけましょう」だけではなく、「あなたは他人を傷つけてはいけない」という教育です。
刑法を教える
↓
「暴行、性犯罪、脅迫、盗撮などは犯罪である」
だけではなく、
憲法を教える
↓
「すべての人は個人として尊重される」
さらに、
人権を教える
↓
「自分に権利があるように、相手にも身体・人格・自由を守られる権利がある」
というところまでつなげる。
そうすれば、
「女性だから気をつける」
「子どもだから気をつける」
「避難所だから仕方がない」
ではなく、
「どんな状況でも、人の人権を侵害してはいけない」
という判断基準を子どもの頃から身につけさせることができます。

